
腎臓病で療法食を食べてる猫に、おやつは与えたらダメ?

でも、少しだけでも好きなものをあげたい…
健康でいて欲しいけど、喜ぶ姿も見たいと思ってしまいますよね。

今回は、こんなお悩みを解決していきます。

こちらのポイントに沿って、お伝えしていきます。

獣医師パパ監修の元、詳しく解説しますので安心して読み進めてくださいね。
腎臓病の猫におすすめ!おやつの選び方|療法食中はダメ?
腎臓病の猫にとって、食事は治療の大きな柱。
それでも、ほんの少しだけおやつを…と思ったとき、まず大切なのは「栄養素の理解」です。
そして、おやつを選ぶときに大切なのは、単に「腎臓に悪い成分を避ける」ことではなく、なぜその栄養素が負担になるのかを理解しておくことです。
一度ダメージを受けた腎臓の組織は元に戻らないため、これ以上悪化させないように、残された機能を大切に守ることが治療の中心になります。

一緒に学んでいきましょう!
① リン:腎臓の負担を悪化
- リンは骨や歯の形成、細胞の働きに必要な重要なミネラル
- 健康な腎臓では余分なリンは尿から排出される
- 腎臓病になるとリンの排出がうまくいかず、血中に蓄積しやすくなる
- 高リン血症が続くと、骨がもろくなったり、血管や腎臓にリンが沈着するリスクがある
- その結果、腎臓病の進行が早まり、症状が悪化しやすくなる
リンは体に必要な栄養素ですが、腎機能が落ちた猫には“過剰”が大きな負担となります。
腎臓がリンを適切に排出できなくなるため、蓄積したリンがカルシウムと結びついて体内で結晶化し、組織に沈着してしまうこともあります。
これが血管の硬化や腎臓そのもののダメージを加速させ、腎機能をさらに傷める要因になるのです。
② ナトリウム:血圧と水分調整に関与
- ナトリウムは体内の水分バランスや血圧の調整に関わる
- 腎臓病ではナトリウムの排出機能が落ち、体に溜まりやすくなる
- 過剰摂取により高血圧・むくみ・脱水のリスクが高まる
- 療法食では塩分(ナトリウム)が制限されているため、おやつで追加すると逆効果
腎臓がナトリウムを適切に排出できなくなると、体内の水分バランスが崩れやすくなり、高血圧やむくみなどの症状が現れます。
これにより腎臓の細い血管が傷つき、病状の悪化を招く可能性があります。
③ タンパク質:老廃物の原因に
- たんぱく質は筋肉や臓器の材料になる重要な栄養素
- 体内で分解されると、尿素やアンモニアなどの老廃物が発生する
- 体内に蓄積すると、吐き気・食欲不振・倦怠感などの症状を引き起こす可能性
たんぱく質は、体内で代謝・分解される過程で、老廃物が発生します。
特に進行した腎不全では、摂取したタンパク質の処理が追いつきません。
その結果、慢性的な中毒状態となり、さらなる腎機能の悪化や体調不良の原因となるのです。
そのため、療法食では猫の腎臓の状態に応じてタンパク質の含有量が細かく調整されています。
④ オメガ脂肪酸:摂り方に注意が必要
- オメガ3脂肪酸は、猫の体内で合成できない「必須脂肪酸」であり、食事からの摂取が不可欠
- EPA(エイコサペンタエン酸):魚由来。炎症を抑え、血液の流れを良くする
- DHA(ドコサヘキサエン酸):魚由来。脳や神経の健康維持に関与
- αリノレン酸:植物油由来。体内で一部がEPA・DHAに変換される
- 腎臓に良いとされる理由は、炎症や高血圧を抑えて血流を保ち、腎機能の低下を遅らせる効果が期待できるため
- ただし脂肪分の多いおやつやサプリの併用で過剰になると、肥満や脂質過多のリスクがある
つまり、オメガ3脂肪酸は“腎臓に良い栄養素”である一方、“摂り方を間違えると逆効果”にもなり得るデリケートな成分です。
⑤ マグネシウム:尿石症のリスクに関与
- マグネシウムは骨や神経の働きに関与する必須ミネラル
- 尿のpHがアルカリ性に傾きやすくなり、結晶や結石ができやすくなる
- 腎臓病と尿石症を同時に抱える猫は、症状が複雑化しやすい
腎臓病の猫では、尿の排泄能力が低下しているため、尿路トラブルも併発しやすくなります。
特にマグネシウム、リン、カルシウムといったミネラルのバランスが崩れると、結石のリスクが一気に高まるのです。
⑥ 水分:腎臓を守るうえで欠かせない
- 腎臓病の猫は尿量が増え、体内が脱水傾向になりやすい
- 水分の多いおやつ(ゼリー・ペースト)は補水に役立つ
- ただし、水分を摂らせるための“おやつの与えすぎ”は、栄養バランスの崩れやカロリーオーバーにつながることもある
腎臓病の猫にとって、水分は「薬」と同じくらい重要な存在です。
腎臓病の猫は、尿を濃縮する能力が低下することで尿量が増えやすく、その分体内が慢性的な脱水状態になりやすくなります。
この脱水が進行すると、腎臓への血流が減少し、さらなる機能低下を招く可能性があるため、水分補給は非常に重要です。
一方で、過剰な水分摂取や、おやつを与えすぎると、体内水分量や塩分・脂質の摂取が増え、腎臓への負担や高血圧・肥満のリスクが高まるため注意が必要です。
猫の腎臓病:急性と慢性の違いは?療法食はいつから?

次は、猫の腎臓病の種類と療法食についての理解を深めていきましょう。
猫の急性腎臓病と慢性腎臓病の違い
種類 | 特徴 | 原因 | 対応 |
---|---|---|---|
急性腎臓病 | 数日〜数週間で急激に悪化 | 中毒・感染症・脱水・外傷など | 原因除去と点滴治療、早期の医療介入が重要 |
慢性腎臓病 | 数ヶ月〜数年かけて徐々に進行 | 加齢・遺伝・過去の腎障害の蓄積 | 食事管理と定期的な血液検査で進行抑制を目指す |
- 急性腎臓病は一時的なダメージで、原因を取り除けば回復の可能性もあります
- 慢性腎臓病は、完治が難しく、進行を「遅らせる」ことが治療の目的となります
慢性腎臓病の猫にとっては、日々の食事が治療そのものなのです。
療法食はいつからスタートする?
腎臓病の療法食は、猫の腎機能がある一定のラインを下回った時点で獣医師から指示されることが一般的です。
目安となるのは以下のような検査結果や症状です。
- 血液検査のBUN・クレアチニン・SDMAの上昇
- 尿比重の低下
- 多飲多尿や体重減少といった慢性的な症状
- IRISステージ2以上と診断が目安
ステージが初期でも、腎臓の機能が落ち始めた段階から療法食を導入することで、病気の進行を大きく遅らせる効果が期待できます。
療法食はあくまで「腎臓の負担を最小限に抑える食事設計」であり、予防目的で与える食事ではありません。

ちなみに…5年以上前が最終診察で、最初の診断時からずっと同じ療法食を与えているという飼い主さんも結構いますが、その子に今あった治療をするためには、必ず定期受診をして欲しいです。
腎臓病の猫のおやつの選び方・与え方

市販のおやつの中でも、注意深く選べば腎臓病の猫に与えても安心なものはあります。
おやつを選ぶときのチェックポイント
チェック項目 | 内容 |
---|---|
成分表示が明確か | リン・ナトリウム・タンパク質の記載があるか |
添加物が少ないか | 香料・保存料・着色料などが少ないもの |
水分量は適度か | ウェットタイプやゼリー状がおすすめ |
獣医師の許可を得たか | 与える前に必ず相談すること |
ラベルに「腎臓サポート」「リン制限」などが記載されている製品から選ぶと安心です。
おやつを与えるときの注意点
- ごく少量(1g〜2g程度)にとどめる
- 1日1〜2回に分け、「与える日」「与えない日」をつくる
- トッピングよりも別で与えるほうが療法食への影響が少ない
- 新しいおやつは少量から始め、体調の変化を確認する
猫の体格や病状によっても許容量は異なります。必ず様子を見ながら、無理なく与えることがポイントです。
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腎臓病の猫に避けたいNG例
- 高カロリー・高塩分の市販ジャーキー
- かつお節や煮干しなど、ミネラル過多になりやすい食品
- 原材料に「調味料」「香料」「エキス」などの記載があるもの
いずれも腎臓への負担が大きく、腎臓病の猫には向きません。
素材がシンプルで、成分がはっきりしているおやつを選びましょう。
【Q&A】腎臓病の猫に関するよくある質問

最後に、実際によくある飼い主さんの悩みをQ&A形式で解説していきます。
Q1:腎臓病の猫が食べてはいけないものは?
A:塩分が高いもの(煮干し・かつお節)、高タンパク食品(肉・魚のジャーキー)、添加物の多い加工品は避けましょう。
Q2:腎臓病の猫におやつをあげるのはNG?
A:完全NGではありませんが、「量」と「成分」に細心の注意が必要です。
療法食を邪魔しない工夫が前提です。
Q3:腎臓病の猫におやつを食べさせて悪化することもある?
A:過剰なおやつの摂取や、おやつばかりで療法食や水分を飲まなくなる状態は悪化要因になります。
成分バランスが崩れると、ろ過機能に余計な負担がかかるため、おやつの量の管理は必要です。
まとめ:腎臓病の猫のおやつ選びは栄養素理解から始めよう
腎臓病の猫におやつを与えるときは、どの栄養素がどのように腎臓に影響するのかを理解することが何より大切です。
「少量」「低負担」の原則を守りながら、かかりつけの獣医師と相談して、愛猫の楽しみに繋げていきましょう。
喜びと健康のバランスを取るおやつ選び、ぜひ今日から始めてみてください。